
| ZDNet Japan 掲載日時:2007/01/01 08:00 2007年は「サービス」時代の幕開け ソフトウェアやハードウェアを単体の「プロダクト」として提供する時代は終わった。これからは、こうし たプロダクトを包含した「サービス」の質で勝負しなくてはならない。 筆者 : 徳田浩司(Fusion Reactor) チャネル名 : ZDNetスペシャル : 特集 : ZDNetブロガーによる2007年IT業界展望 URL : http://japan.zdnet.com/sp/feature/07sp0010/story/0,3200081627,20340130,00.htm Korean : http://www.zdnet.co.kr/news/enterprise/etc/0,39031164,39154275,00.htm 昨年、米国のエンタープライズ系ソリューションをいろいろと見ているうちに強く感じることがあった。 2006年は大きな転換時期だったのではないかということである。ソフトウェア、ハードウェア等を単一 の「プロダクト」として提供し、その品質で勝負する時代が終焉し、それを包含する上位概念であるソ リューションという「サービス」の質で勝負する時代が、まさに到来したのではないかということであ る。この傾向は近年高まってはいたのだが、自分自身、本格的に米国ソリューションを投資の対象と してみるようになって、明確にそれを感じた1年であった。そして、今年2007年は更にこの傾向に拍 車がかかるものと思われる。 1990年代のシリコンバレーの成功パターン 翻って、1990年代のシリコンバレーでの成功パターンを見てみると、1つのモジュールとしての「プ ロダクト」の短期開発と、海外展開によるマーケットの水平展開、そして多額の資金を投下して大量 生産する短期回収であったと思う。通信・ネットワーク・業務系ソリューションなどの分野における、 PCやネットワーク機器などの箱物のハードウェアや、それらに搭載する半導体やソフトウェア、エン タープライズ向けのミドルウェア、セキュリティ関連ツール、業務系パッケージソフトウエアなどがまさ にそうであった。ベンチャーキャピタル(VC)から10億円単位で投資をしてもらい、巨額の先行投資を 行う。一旦プロトタイプが完成すると、米国のみならず、欧州や日本を含むアジアなど全世界に対し 営業をかけ、一気に売上の拡大を図って行く。収益性はともかく、成長性をアピールしてNASDAQに 上場し、期待値により株価はうなぎのぼりで、VCは大きなリターンを得る。これを4~5年で、早けれ ば2~3年で実現するというのが常套手段であった。 新しい競争ルールは「サービス力」 今これをそのまま信じる人は少ないだろう。回収が簡単ではないからだ。2004年のSOX法の施行 により、コンプライアンス対策コストが跳ね上がり、新規公開しづらくなっていることが主要な原因とし て上げられる。IT分野の新規公開数は、四半期ベースでわずか10件にも満たない。これでは確かに 回収できない。しかし、それ以上に大きな問題が生じているのだ。国際間の競争、プロダクト間の競 争は先鋭化し、シリコンバレーのものでなくても安く優れたプロダクトが手に入ることである。そのた め、プロダクトの開発による価値創造に固執する企業は、世界的な競争に巻き込まれ、なかなかビ ジネスが立ち上がらないのだ。 しかし、そういう時代であるにも関わらず、一方で近年大きく成長を果たした企業が多数存在する。 それらは、明らかにこれまでVCが投資していた企業とは異なるビジネススタイルを取っている企業 だ。 大きな違いは、コンサルティングを含む、さまざまな優れた「サービス」の存在の有無である。 Googleなど純粋なオンラインによるサービス業はもちろんのこと、ソフトウェアベンダー、ハードウェア ベンダーという「プロダクト」を製造・販売する企業においても、サービスの有無やその品質が大きく 左右していると思われる。もちろん、主たる売上はプロダクトであるため、90年代のベンチャー企業と 一見変わらない。しかし、高度成長を果たしている企業、収益を上げている企業の中身をよくよく見 ると、クライアントに対する「サービス」を提供することによる差別化・高付加価値化が伴っているの である。 少し言いすぎかもしれないが、それら企業にとって、プロダクトはサービスを構成する一要素にしか 過ぎない。実際のビジネスモデルとしては、従来と同じく、プロダクトによる売上と言う形態を踏襲し ているのだが、クライアントが価値を認めて支払っているのは、間違いなく、問題点を解決してくれる ソリューションであり、「サービス」に対してである。そうなると、極論すれば、プロダクトは全て自前で ある必要はなく、不足するものはコモディティ化したものを買ってくればよいし、アウトソーシングすれ ばよい。品質が安定し、かつ低価格である。だからこそ、パートナーシップ戦略が重要となっている のである。 米国で生活してつくづく感じるのは、いろいろな分野で、サービスの品質が悪いということだ。日本 はずばぬけた天才は現れなくても、平均点は高い。「サービス」の品質が高いのである。米国が、資 金力にものを言わせ、モジュールとしてのプロダクトを大量生産し、派手な宣伝を行い、世界中に売 りさばいていた時代は終わった。もちろんそれが今でも通用する分野は存在する。しかし、少なくとも ITのソリューションではなかろう。それに気がついた経営者が成功をもたらしている。そう考えると、 例えば、「プロダクト」のみならず、現地生産という「システム」とクライアントへの「サービス」を輸出す ることのできた日本の自動車メーカーが勝者となったのは自明である。 コア技術だけでは不十分 プロダクトのコア技術は成功の必要条件ではあるが、十分条件ではない。サービスの技術や品質 を軽視するのは間違っている。現実的に、近年成功をもたらしているベンダーは、旧来のVCが見向 きもしなかったような企業が少なくなく、自己資金で成長を果たした企業が多いのには大変驚いた。 実際には、米国でもこのことを理解できていない人たちは少なくない。シリコンバレーのVCですら、 古めかしい従来型の投資スタイルを今も踏襲し、投資先を探しているところがある。彼らは、古きよ き時代が再び到来するのを心待ちにしている。アジアに強みを持つVCは、米国では投資機会が少 ないとして、アジア地域に投資対象をシフトして成功したところがある。しかし、これは例外中の例外 であり、海外にリレーションを持たない多くのVCは苦しんでいるのである。時代は元には戻らないと 思われる。 簡単に真似できないサービスの技術と品質 プロダクトが競争力をそれほどもたなくなっているのは、実はいくらでも真似ができるからだ。例え ば、ライバル企業の技術者を採用することも方法のひとつだ。シリコンバレーはレイオフが頻繁で、 いくらでも供給がある。バイオのように、物質の分子構造まで特定した特許なら特許戦略は有効だ が、ITの世界では抜け道はいくらでもある。実際に、ITである分野の特許を調べたことがあるのだ が、類似のものが多数成立していて非常に驚いた。特許はあっても、それほど役に立たないのであ る。むしろ事業化段階でどうビジネスをするかの勝負であり、プロダクトの技術そのものはすぐに陳 腐化してしまうのである。 逆に、サービスはそう簡単には真似できない。一見、サービスを保護するものは何もないし、すぐに 誰でも真似ることができると勘違いする。しかし、特に問題解決能力を要求されるサービスほど、長 い時間と経験(失敗も含めて)を必要とする。サービスを支える体制の構築や、人員の教育が必要 なのだ。そのため、サービスの品質とそれを実現するマネジメントのノウハウは簡単に真似ができな いのである。ある程度形ができ、水平展開できるまでには、相当の時間がかかる。創業して10年、 20年を経過した企業はざらで、VCが敬遠してきた企業だ。しかし、こうしたサービス技術を持つ企業 は、今後非常に大きな競争力を発揮すると思われる。これを短期間で整備するには、サービス技術 をもつ企業を買収するしかない。 しかし、さすがなもので、スタンフォード大学で国際間の技術力と競争力を研究している研究所で は、すでにこの事実に気がついており、このことを指摘している。 サービス化はさらに進む さて、2007年の展開であるが、サービス化はさらに進んでいくと思われる。そして、次の展開として 考えられるのはユーティリティモデルだ。クライアント側も、早期の問題解決を求めるため、ソリュー ションを資産として持つことにこだわらなくなり、例えばSaaS(Software as a Service)などがより進展 してくるだろう。 日本企業への教訓として言いたいことは、目先の売上拡大ではなく、サービスの品質にこだわるこ とが必要だということだ。こうした努力を続ける企業は、近い将来、そして未来永劫も、成功する確率 が高いと思われる。 Copyright © 1995-2006 CNET Networks, Inc. All Rights Reserved. |
